1社(一部)だけ任意整理できますか

1 一部だけ任意整理ができるか

債権者が1社だけではなく複数社いたり、住宅ローンの債権者やオートローンの債権者とクレジットや消費者金融の債権者がいる場合、その一部だけを対象に任意整理をしたいと考えられる方もいると思います。

任意整理とは債務整理手続の一種で、借金の利息をカットしてもらったり返済期間を引き延ばしたりして毎月の返済額を減らし、数年間の長期弁済により完済する制度です。

最大の特徴は裁判所の介入なしに個別に債権者と交渉して和解を成立させる点でありますから、依頼者の方で任意に選択して任意整理を行うことも可能です。したがって、多数あるうちの1社(一部)だけ任意整理することも可能と言えます。

2 一部だけ任意整理するメリット

任意整理は借金の利息をカットでき、長期で分割弁済を目指す制度なので、任意整理を利用することでトータルの借金の支払額が大幅に減ることが予想されます。

基本的には前債権者に対して任意整理をすることをお勧めしますが、中には一部だけ任意整理することが推奨される場合もありますので解説します。

① 借金の保証人がいる場合

借入した際、債権者から連帯保証人を立てることを求められた場合、主債務者である依頼者が任意整理をすると連帯保証人に督促がされることになります。連帯保証人に迷惑をかけたくない場合は任意整理の対象としないことをお勧めします。

② 自動車ローンを契約している場合

自動車ローンを組んだ場合、特にディーラーや信販会社でローンを組んだ場合はほとんどの場合に所有権留保といって、自動車の名義はディーラーや信販会社に留保され、任意整理を契機に自動車の引き揚げがされることになるため、自動車を手元に残したい場合は自動車ローンを任意整理の対象から外すことが必要です。

③ 住宅ローンを組んでいる場合

住宅ローンは任意整理ができないため、任意整理の対象から外す必要があります。また、住宅ローンの債権者と同じ銀行のカードローンの契約がある場合も、カードローンの任意整理をすることで住宅ローンの契約に影響を与えるため除外する必要があります。

3 一部だけ任意整理際に注意すべき点

① 破産する場合に偏頗弁済を疑われる可能性がある

任意整理後にやはり債務が支払えないとなり自己破産に移行する場合、破産管財人から偏頗弁済を疑われた場合、免責不許可事由となり最悪自己破産ができないことにもなりかねません。

一部の債権者を任意整理の対象とする場合、任整理対象の債権者の弁済はストップしてその他の対象ではない債権者は支払いを継続することになりますから、債権者を平等に取り扱わなければならないという債権者平等の原則に反することになるからです。

② 一社だけの任意整理でもブラックリストに登録される

1社だけ任意整理したとしても、その任意整理の情報は信用情報機関(ブラックリストのこと)に登録されてしまいます。この情報は金融機関で共有されるため、任意整理の対象外としたクレジットカードが利用停止となり強制解約になることもあります。

③ 根本的な解決にならないことも

依頼者の方が経済的再生を記す為に最も効果的な方法は全体を任意整理する方法です。一部の債権者だけの任意整理ではその効果も限定的であるため、今の苦しい生活状況の根本的な解決にはならないかもしれません。したがって、よほどの理由がない限りは原則として全体を任意整理するべきであると言えます。

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